さていちれんの”ベンガラ伝説”だが、今回でおしまいである。もし初めてココを訪れた方がおられたらば、このリンクから読んでほしい。
畑山という苗字が、叔母の旧姓だということは以前書きました。畑山さんと叔母の関係をそのとき追及するべきだったのですが、B、C、Dの三氏の取材を優先させてしまいました。休み明けの21日、わたしは東京駅八重洲地下街のNTTのサービスセンターに向かいました。叔母の実家とは疎遠とも書きましたが、叔母の家族構成のことは良く知っていました。それには理由があります。
叔母の実家は諏訪で魚屋をやっていました。兄が二人いて、長男は信州大学を出て医者に、次男は夜学から一橋に進学して公認会計士になりました。そんな兄弟のことを、母が、よく「魚屋の子供が、医者と会計士」になったと話すので覚えているのです(無神経な母は、叔母に面と向かって、この言葉を発するので、とうとう叔母は母と不仲なままでした)。次男はいざ知らず、長兄は諏訪で開業しているのではあるまいか。そう思い、わたしは諏訪の畑山という医者と連絡をとろうと思ったのです。結果はビンゴ。二件目でわたしは、叔母の兄を探しあてました。
畑山医師は、息子にまかせ、隠居中の身とか。突然の電話にも丁寧に応対して下さいました。
以下、畑山医師の話です。
「ベンガラ」などというもの(わたしが目撃した人のようなもの)には、全く心当たりはない。どうして妹がそんな話をしたのかも分らない。「赤蛙」の神事は知っているが、人柱とかそんな物騒なものではない。Bという人物は信用できるのか(そう言われて、わたしもそろそろ、Bという人が大嘘付きだったのではないかと思えてきました)? ただし、紅殻とドイツの秘密兵器に関しては思い当たることがある。
わたしは、終戦後、信州大学で予防医学の研究をしていた。民間療法のそれも迷信のようなものから、近代医学に移行させ、集団検診を実現させるのが目的だった。そうした活動をしていたとき、紅殻を用いた強体術というものを行っているものが何人も居た。体に紅殻を塗り、壁に体をぶつけて鍛えると言うもので、それが昂じると、大木や岩に体当たりするらしい。打撲傷、骨折ならまだいいのだが、毛細血管が分断され、血尿、それが凝固して、腎不全を起こしているものまでいた。そして、この無茶な強体術の根拠は、終戦間際ドイツから伝えられたと言うものだった。彼らの取材を続け、発信源を突きとめんとして、わたしは、ついにU中将という軍人にいきあたった。その当時、戦犯として獄にあったが、その名前はよく知っていた。わたしは教授の手を借りるなどして、ついにU中将の側近だったFという人物をつきとめた。
Fは終戦間際、牛島辰熊などと共に、東条英機暗殺計画に連座した容疑で投獄されていたため、戦犯を免れていた。Fによれば「強体術」は、不死身の軍人を造ろうとしたU中将が、ゲッベルスのラストバタリオンの計画から思い立ったもので、実際医学的考証はドイツからもたらされたものだということだった。それは、漢方及び中国武術の秘伝を、近代医学的に研究した成果だった。中国武術に「鉄砂掌」という錬功法がある。具体的には、酸化鉄を掌に塗り込め、砂袋を打撃して、鉄より強固な拳を作り上げるという技術だった。本当の「赤蛙」とは、その錬功方から造られた不死身の兵士である。だからあなた(わたし=筆者)が聞いた人柱の話なんて、全くの嘘だろう。また、Fによれば、巷間行われている「紅殻」の強体術も、まったくの出鱈目で、紅殻を用いるということのみ当たってはいるが、あんな方法では、到底不死身の肉体など得られないということだった。わたしは半信半疑で、そんなこと(不死身になること)が可能なのか問うた。Fは自信満々という表情で答えた。
「間違い無い。ドイツで、メンゲレが人体実験を繰り返した末、開発した方法だ」
メンゲレ・・・。ヨーゼフ・メンゲレ博士のことか。わたしは背筋が寒くなるのを覚えた。
U中将は、皇居・大本営を松代に移転し、そこで本土決戦を迎えることを計画していました。「赤蛙」の軍団は、戦車に対して白兵戦で応じられる、無敵の兵団となる予定でした。
しかし、そうはならなかった。「赤蛙」は完成しましたが、それはついに、天皇の赤子たることはなかったからです。
メンゲレ博士が繰り返した実験の話は、多分他のスレにあるかと思いますので、ここでは書きません(畑山医師が、F氏からの伝聞として話してくれたことですし、F氏も実際に立ち会ったわけではないようです)。
結論から述べれば、「赤蛙」は、人格が崩壊していて、戦争には使えなかったということなのです。目の前の危険に反応する、本能的に身を守って、確実に敵を倒す。それは完璧にできるのですが、集団として、敵を攻撃するとかという、システィマティックなことは全く出来ない。つまりは、虎とかライオンの集団のようなものだった。そうした「赤蛙」に脳手術を施して、軍人として造り直す作業をしていたのが、帝大医学部から引き抜かれた天才的な医師、畑山医師だった。畑山医師は、その名をF氏から聞いておどろきました。
「君の縁者か?」
「従兄です」
「では、畑山くんが自ら赤蛙になったことは当然知っているね」
わたしも驚きましたが、畑山医師のおどろきは並大抵のものではなかったでしょう。
とうとうFという人物から畑山医学博士という人物にたどり着いた。そしてその怪人物は筆者の遠縁の畑山医師の従兄なのだ。
昨夜家に帰ると、畑山医師から手紙がきていました。手紙の内容はさることながら、一葉の写真が同封されていたのです。畑山医博の写真でした(なにか畑山さんと言う人が、だんだん実在の人物ではないような気がしてきてしまい。写真をリクエストしたのです)。その写真を見て・・・そのことは最後に書きます。
畑山医師の話、Fとの対話と言う形式で書いている時間もないので、結論から書きます。
終戦直前、ドイツの医学技術と中国武術の秘伝を組み合わせることによる不死身の兵士造りは、脳障害という副作用で頓挫しかけた。そこで招聘されたのが、東京帝国大学脳神経科教室の畑山医学博士だった。いかなる手法を用いたか、詳細は不明だが、畑山医学博士は、その問題を解決し、ついには自らが実験台となって、赤蛙となることを志願した。それは美しい犠牲精神を発揮したのでは決してなく、畑山博士は、完全に自己が不老不死の鉄人になるという確信を持って、のぞんだのだ。
従兄は、永遠の時間と鋼鉄の肉体を手に入れたのだと、畑山博医師は確信しているようです。
畑山博士は実験の成功とともに、行方不明となり、すぐに終戦が訪れました。ふらりと帰ってくる事もなく、以来行方はようとして分からない。また肝心な資料は全て畑山博士が持ち去り、残りはU(内田ではありません)中将が全て処分した。関係者の中の何人かが、不老不死にあこがれ、酸化鉄による肉体改造を試みたが、成功するものはなかった。畑山医師が大学時代出会ったのは、こういった人々の流れをひく人たちなのだろう。しかし、数年後、思わぬ展開があった。石井部隊(831部隊)の問題だった。戦時中の非人道的行為が糾弾され、その手が諏訪にまで伸びてきたのだ。ナチスドイツから持ち帰った旧陸軍の研究と言うのは、余りにも危険な存在だった。そこでこの実行者たちは、迷彩をはったのである。曰く「赤蛙の神事」これは太古より諏訪神社に伝えられた神事であり、古代は丹を用いて生贄を捧げたものだが、近代になって紅殻を用いその形を真似るだけになった。生贄ではなく人形を人柱のように埋めているのだ。
わたしが見た「紅殻」というのは、この架空の風習の形骸化した名残だったのでしょう。遮光土偶のような顔と書きましたが、あれは下手糞な蛙の顔だったのです。父も叔父も気楽な気分で紅殻を製作したのでしょう。今年は出来がいいというのは、余所者である父と叔父に対する地元の人間のお世辞とも考えられます。叔母は太古の生贄云々の話を信じていたのでしょう。「昔は・・・酷いこと・・・」というのは、20数年前のことではなく。大昔という意味だったのだと思います。先輩からのメイルにもこのことが書かれていました。先輩の一族では、ごまかしで紅殻人形を作ったりした行為を恥じて「なかったこと」にしたそうです。しかしボケていた(先輩の言葉です)祖父さんは、物置に残っていた紅殻を見つけ、昔に戻ってベンガラを作り出してしまったのです。恍惚の人となっていた祖父さんは、しかし、ベンガラを思い出せず、紅殻から連想したのは(海老の)鬼殻だったのです。隣人などから、昔の行為を話題にされたときは、神社のお飾りを作っていたとごまかしたそうです。
拍子抜けでしょうか?
これが、わたしのたどり着いた真実です。
写真の話をします。写真に写っていた畑山博士は、紛うかたなく、Dさんの別れたご主人でした。
他人の空似? あるいはそうかも知れません。わたしは元ご主人には2,3回しか会った事はないし、出自に関してもまったく知りません。迷惑な言いがかりかも知れません。しかし、他人の空似では片付けられないくらいよく似ているのです。ドイツとの因縁を考えると、なにかの思惑があって、Dさんに近づいたと思えてならないのです。90歳を超えているはずの畑山博士は、当時とまったく同じ容貌で、永遠の時間を生きている・・・
これで、話は全て終わりです。信じていあただけますか? でしたら、この件に関しては、これ以上、詮索、追及しないようにお願いします。
ネタだと思いの方、もうわたしは、このスレを手放します。ご自由に続きのストーリーをお書きください。
長い間おつきあいいただいて、お疲れ様AND有り難うございました。
ちゃんと、結末まで書きました。これでも、まだ、まうとかまー言われるのでしょうかね。
では、またいつか。
さて、いかがであったろうか?個人的には、未だに畑山医学博士が歴史の陰で生きているというのが、ゾクゾクきたね~。なんだかロマン(?)があるじゃな~い。ただこの怪人物の目的がなんなのかは不気味ではあるが......(自分の研究が正しいことを証明するためとかゆーのはナシよ)