今日、ラボからの帰り道、小ガモをつれたカモを見つけた。ああ、もう孵化の時期なんだね。
ここ数日は大気が不安定で雷雨となっている。これも(Bozemanでの)春から夏への風物詩。これを過ぎればとうとう夏の到来だ。(といってもそんなに長くない夏なのだが......)
最近の研究とゆーか実験は少し壁にぶち当たっている。とくに速度論がだ。酵素反応といえば大抵の理系大学で生物化学を履修すれば必ず学ぶハズのミカエリスーメンテン式をもとにした速度論が展開される。コレは大前提として酵素(触媒)に対して基質(反応するもの)が大過剰量であること、そして酵素と基質の会合・解離が速いことが条件である。特に前者は速度論の世界では定常状態近似(steady-state approximation、実際には基質は酵素反応ないしは触媒反応で消費されて基質量は時間とともに減少していくわけであるが、この減少量を無視できるように大量の基質を加えておくことで反応、とくに初期の反応状態において基質量を一定とみなすこと)という扱いをするための前提であり、化学における反応速度論でもしばしば出てくる概念だ。ミカエリスーメンテンモデルの数学的記述は横軸に基質濃度、縦軸に反応速度(単位時間あたりに反応生成物が増大していく量、通常は反応生成物の量を直接かつリアルタイムで測定できないので、その生成物量に呼応して変化する化合物を入れておき、その変化を測定する)ととると上向きに曲面をもつ双曲線となる。ミカエリスーメンテン双曲線には漸近線(asymptote)という限りなく近づいていくけれどけっして交わらない横軸に平行の直線がある。この漸近線の値(つまり反応速度)がVmaxと呼ばれるものである。そしてこのVmaxが半分の値のときの双曲線が与える基質濃度をミカエリス定数(KM)と呼ぶ。とくにミカエリス定数はおおざっぱに言えば、基質と酵素の"相性の良さ"だ。(化学的には基質親和性とでも言おうか)
ここに酵素と速い平衡状態を形成する阻害剤をある濃度で加えることでミカエリスーメンテン双曲線が与えるVmaxとKMの挙動の変化を調べるのが酵素反応速度論の骨子だ。(ここから酵素反応における阻害剤の会合様式や阻害剤の酵素に対する解離定数を同定できる)しかし、現在のワタシのやっている反応系では定常状態近似はクリアしているのだが、もう一つの条件、"速い平衡状態”ではなさそうな知見が得られてきた。これは可能性としてミカエリスーメンテンモデルに従わないということである。こーなると実験のデザインを練り直さなければならない。
じつわすでにこの古典的ミカエリスーメンテン挙動を前提として論文草稿を書き上げていたのだが、ここに来てその議論だけだともしかしたら足りないかもしれないのだ。ただワタシも書きながらおもっていたのだが、ミカエリスーメンテンモデルだけで実験データを解釈するには決め手に欠けるような気がしていた。まあこれが"壁"だが、これをうち破る目星はすでについている。非ミカエリスーメンテンモデルであるslow, tight-binding inhibitionというモデルがあるのだ。(改めて人類はいろいろと調べてきたものだと感心してしまう)この分類に当てはめることができれば、もっとつっこんだデータの解釈ができるはずである。だから今はこのモデルの前提を確認するための実験をしている。はっきりいって地味だし、簡単には派手なデータの出ないところだ。
まっ、そんなわけで、夏の到来が近いのにあんまり景気の良い状態ではないねぇ。
ここ数日は大気が不安定で雷雨となっている。これも(Bozemanでの)春から夏への風物詩。これを過ぎればとうとう夏の到来だ。(といってもそんなに長くない夏なのだが......)
最近の研究とゆーか実験は少し壁にぶち当たっている。とくに速度論がだ。酵素反応といえば大抵の理系大学で生物化学を履修すれば必ず学ぶハズのミカエリスーメンテン式をもとにした速度論が展開される。コレは大前提として酵素(触媒)に対して基質(反応するもの)が大過剰量であること、そして酵素と基質の会合・解離が速いことが条件である。特に前者は速度論の世界では定常状態近似(steady-state approximation、実際には基質は酵素反応ないしは触媒反応で消費されて基質量は時間とともに減少していくわけであるが、この減少量を無視できるように大量の基質を加えておくことで反応、とくに初期の反応状態において基質量を一定とみなすこと)という扱いをするための前提であり、化学における反応速度論でもしばしば出てくる概念だ。ミカエリスーメンテンモデルの数学的記述は横軸に基質濃度、縦軸に反応速度(単位時間あたりに反応生成物が増大していく量、通常は反応生成物の量を直接かつリアルタイムで測定できないので、その生成物量に呼応して変化する化合物を入れておき、その変化を測定する)ととると上向きに曲面をもつ双曲線となる。ミカエリスーメンテン双曲線には漸近線(asymptote)という限りなく近づいていくけれどけっして交わらない横軸に平行の直線がある。この漸近線の値(つまり反応速度)がVmaxと呼ばれるものである。そしてこのVmaxが半分の値のときの双曲線が与える基質濃度をミカエリス定数(KM)と呼ぶ。とくにミカエリス定数はおおざっぱに言えば、基質と酵素の"相性の良さ"だ。(化学的には基質親和性とでも言おうか)
ここに酵素と速い平衡状態を形成する阻害剤をある濃度で加えることでミカエリスーメンテン双曲線が与えるVmaxとKMの挙動の変化を調べるのが酵素反応速度論の骨子だ。(ここから酵素反応における阻害剤の会合様式や阻害剤の酵素に対する解離定数を同定できる)しかし、現在のワタシのやっている反応系では定常状態近似はクリアしているのだが、もう一つの条件、"速い平衡状態”ではなさそうな知見が得られてきた。これは可能性としてミカエリスーメンテンモデルに従わないということである。こーなると実験のデザインを練り直さなければならない。
じつわすでにこの古典的ミカエリスーメンテン挙動を前提として論文草稿を書き上げていたのだが、ここに来てその議論だけだともしかしたら足りないかもしれないのだ。ただワタシも書きながらおもっていたのだが、ミカエリスーメンテンモデルだけで実験データを解釈するには決め手に欠けるような気がしていた。まあこれが"壁"だが、これをうち破る目星はすでについている。非ミカエリスーメンテンモデルであるslow, tight-binding inhibitionというモデルがあるのだ。(改めて人類はいろいろと調べてきたものだと感心してしまう)この分類に当てはめることができれば、もっとつっこんだデータの解釈ができるはずである。だから今はこのモデルの前提を確認するための実験をしている。はっきりいって地味だし、簡単には派手なデータの出ないところだ。
まっ、そんなわけで、夏の到来が近いのにあんまり景気の良い状態ではないねぇ。