米国けんきゅうにっき

はじめまして!2001年に日本を飛び出し米国へ。研究分野は化学でしたが、2005年のはじめに職場を東海岸から山の中へ移し、その際に研究分野も大きく変えました。そして2010年に結婚とグリーンカード取得。さらにさらに2011年夏に再び1800マイルを東に向かい、新天地、ミシガンに生活の場を移しました。せっかくの貴重(?)な人生なので、日々の出来事を残しておくことができれば幸いです。

2008年01月

事象の地平

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 今日はMartin Luther King, Jr. Dayということで、公的には祝日だ。今朝は冷え込みが厳しく、氷点下26℃まで下がった。大学の授業も無いため、朝、外に出ると静寂の銀世界が広がっている。ここまで気温が低いとクルマもあまり走っていないのである。ラボに向かって歩いているウチにさすがに顔が痛くなってきた。まあだいたい15分くらいが外に居られる限界だろう。なんて思ってブログを書いているとこんなニュースを見つけた。

問題児をシベリア送り=過酷な環境で更生狙う-独
1月21日7時1分配信 時事通信

 【フランクフルト20日時事】問題児は極寒の地で更生を-。ドイツのヘッセン州ギーセン郡が、暴力行為で家庭や学校が持て余した少年(16)を更生のため、古くから流刑地として有名なロシアのシベリア地方に送り込んでいたことが明らかになった。
 ドイツのメディアによると、少年が送られたのは真冬には気温がマイナス55度まで下がる人口約5000人の寒村。テレビもインターネットもなく、暖を取るためにはまき割りをしなければならない環境で、少年は世話役1人と生活している。期間は9カ月の予定。
 現地を視察したギーセン郡青少年局幹部はフランクフルター・アルゲマイネ紙に対し、「少年は世話役とかかわり合い、自信と社会的能力を得た」と語っている。


 なんだかやることが過激だな(^^) でもこんな更正法もアリなのかもね。実際、氷点下55℃なんて聞くと、ヒトが生きてきてるかどーかの境界だよな。そう思うとモンタナの冬なんてまだまだチョロいのかもねぇ。

 さて昨年末の話になるのだが、日本の共同研究グループからデータが送られてきた。昨年の後半に私が精製したタンパク質を日本に送っており、そのタンパク質と彼らが持っているタンパク質の間の相互作用を解析するのが目的であった。さていざデータをみると数字(速度定数)とグラフ(サイクリックボルタモグラフィー)が記載されているだけである。まあ現象論としてはおもしろくて良いのだが、細かい実験条件(pHや温度、試料の濃度、嫌気下かどーかなど)や何回繰り返したのか(データの信頼性)、どのように数字を導いたのか(測定の原理や理論)がまったく説明されていないのだ。研究者ならだれでもそうであると思うのだが、まず得られたデータが審査論文に掲載するに耐えうる信頼性なのかを吟味すると思う。その際、上記の情報は必須だ。まあ最後の理論に精通することはコチラ側の責任でもあるので、電気化学は専門外なのだが、その理論が記された原著論文を探すことにした。まあ手がかりはある。その共同研究者である○ーズマンの過去の著書にある参考文献を漁るのである。そもそも彼の似たような実験を記した論文は日本化学会のChemistry Letterなので、ここMSUからはPDFをダウンロードできない(サブスクリプトされてないのだ)。だからひさしぶりに寒空の中を図書館まで行ってきてコピーしてきた。はたしてカレの論文にはその電気化学理論の参考文献が記載されていた。ACSのAnalytical Chemistryで1964年のものだ。

 さて今回、ちょっとショックを受けたことがある。その論文は簡単に読んだのだが、今回の件は私にもう少し数学を勉強しなおさなければならないことを痛感させてくれた。私自身は理系に進む以上、数学というのは絶対必要不可欠のツールだと思っていた。その反面、私は要領が悪い方だったので、演算実習とかあんまり得意ではなかったのだ。そんな私の問題を反映するようなことが学部時代にあった。

 私は化学科に通っていたので、当然、山のようにある化学の単位を片っ端から取っていたのだが、そこのシラバスには(化学科が提供するカリキュラムにおいて)初等の大学数学のみしか提供されていなかった。たしか"線形代数"とかいったかな?数学科の教授が教えに来ていたが一般教養の扱いであった。でも当時から"数学は大切"と思っていたので、まじめに受けていたつもりである。そんな中、同期の○んぴらも当然、とっていたのだが、ヤツは意外と演算センスがあるのか"マクローリン展開"の課題をさっさと解いていた。(コレには理由がある。その課題はおわった順に授業を退出してよかったのだ。だからヤツはさっさとかたづけて出ていきたかったのだろう。)私は教えてもらったことそすぐにできるというヤツではなく、どちらかといえば"グズ"だったので結構、時間がかかったのは覚えている。まあ私の同類でもある別の"グズ"も同様に時間がかかってたんだな~。ワタシがおわったとき、そいつはまだ解いていた。で訴えるような目をするので、まあワタシの理解の範囲で教えてあげてたんだ。そーしたら授業時間がおわってしまい、その数学科の教授はさっさと出ていってしまったのである。ちなみに課題を教授に出さないと単位がもらえないのだが、この数学概論はたしか必修だったので、こいつを落とすと限りなく留年に近くなるのだ。さすがに焦ってその数学科の教授のところまで課題を持っていったのだが、カレはご立腹であった。なぜ時間内にださないのかと。まあ、その辺はこちらに非があるのだが、なんだか数学に苦手意識ができたのはそのときかもしれない。その教授の後期の授業、"微分方程式"もとったのだが深い理解には至らなかった。そんなこともあり、ツールとしての数学の理解はちょっと中途半端なものとなってしまった。

 さて話をその電気化学の論文に戻そう。内容は簡単にはサイクリックボルタンメトリー(CV)を用いて電子伝達速度を数学的処理で見積るというものである。CVから得られる主要なデータは酸化還元電位と電流、そして掃引速度である。これらの値から速度定数を得られるというのが著者の主張である。論文には拡散の法則として有名なフィックの法則を元に理論を展開している。(CVを測定するときは攪拌しないので、この法則が生きてくるのだ。)そのフィックの法則の数式は微分方程式で記述されているのだ。ここにきて苦手意識が顔を出してきた。更に記述はその解を進める。このフィックの方程式の束縛条件が定義され、さらにこれをラプラス変換して解き進めていた。ここまで来ると自分の不甲斐なさがくやしいね。だから冒頭に戻るけど、数学を勉強しなければなと思ったワケ。

 学問なんて一見てんでばらばらに進歩しているけど、どこかで繋がっているんだなと思うときがある。(化学でも測定装置に"フーリエ変換"なんちゃらかんちゃら装置とかあるしね。)オイラーの公式なんて良い例だと思うよ。全く別の目的で作られたものたちが集まってできた"人類の至宝"。故に"単純で美しい理論こそ真実であろう"という言葉が重みをもつわけだからね。だからもし20代前半で数学ではない自然科学の分野に足を踏み入れようとしている人たちも、絶対に数学をやっておくことを薦めるよ。ラボの同僚のJohn(60代半ば)も数学の聴講しているしね。

最強の電源

 ちょいとさかのぼるが、先週の中頃にPCの電源を注文した。いわゆるATX電源だ。なぜ突然注文したのかといえば全くの衝動買いなのだが、もうちょっと事情がある。元々使っていた電源はケースに付属していた480Wクラスで一応、電気喰いのPentium 4対応なのだが、Neweggのレビューなどではみそくそに言われていた。まあこれまでのPentium IIIクラスならば問題なかったのだが、今回のSocket939版のAthlon 64 x2にしたうえに、将来的にはnVIDIAのGeForce8シリーズを乗せようと考えているのである。出力不足は十分考えられるわけだ。

 もう一つはこの電源ユニットの後部にビルトインされているLCDだ。ご存じかどーかしらないが、ワタシは大の液晶フェチである。(そんな単語があるか知らないが......)この電源には各系列の電圧を常にモニタしてLCDに表示しているのだ。問題はこのLCD、筐体の後ろ側に面しているので、あまり実用的ではないとゆーのがたまにキズなのであるが。

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見よっ!このLCDを!!パッケージを開けて一抹の不安が......デカいっ?


 そして3番目の理由はNeweggのmail-in Rebateが10日オーダーまでだったのだ。今回のリベート額は$40だ。しかも今回は送料無料ときた。どうせ将来的に買うのならば、もう今回のリベート期間中に買ってしまえっと思ったのである。

 まずブツが届いて思ったのが......デカいっ!?いやこの電源を入れようと思っている筐体はMicroATX用のキューブ型のやつなので、そんなにスペース的に余裕のあるものではないだ。でもたしかに750Wクラスの電源だとデカいにきまっているわな......すでに物欲のために常識的判断を欠いていたよーである(^^;)

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たしかに前の電源よりも大きいね~♪しか~し見よ、この美しい背面をっ!


 見ていただければワカると思うが、確かにデカすぎた......そんなワケで今回は光学ドライブをあきらめた。実際、光学ドライブなんて飾りですよ、それが偉いヒトにはわからんのですっ!!まあそれだけじゃなくてたくさんのコードもあって筐体内はもう大変なことになっているのだ。

 さて使い心地はといえば、電源にそんな使い心地もクソもないのである。ただ裏のダイアルで電源のファンの速度をコントロールできるので以前よりも音が小さくなった気がする。またこれだけ巨大な電源が搭載されているとなんだかドロ船に乗った気分で居られるのも心強い。(問題はメーカーが筐体と同じAPeviaという台湾系メーカーなのだが、あくまでココは電源が専門ではないのだ。それがちょっと不安といえば不安だが......)

 この無駄に高出力の電源だが、これでGeForceのSLi構成も可能になった。(しかしMicroATXではそんなSLi対応マザーなんて出ていないのだが......)ココは無駄に消費電力の大きいビデオカードでも買おうかしらん♪

IT関連の雑感

 またまたApple関連のお話。私はよくIT関連のニュースを読むのだが、最近はライターの名前もチェックするようになった。そうなるとおもしろいもので文章のクセ(というかライターそのもののクセ)で、だれが書いているのか想像できるようになった。もちろん本職でもないし、将来、そんなものになるつもりも無いので、厳密にわかるというわけではないのだが。

 さてそんななかIT Mediaで掲載されていたAppleのExpo関連の記事が目に留まったのである。一つは「“生ジョブズ”への遠い道のり――「Macworld Expo 2008」開幕直前リポート 」、もう一つは「Macworld Expoで一番“熱い”のはマイクロソフトかも 」でどちらも林信行というヒトがライターだ。特に後者の記事に何か(でもたぶん個人的な)違和感を感じたのだ。以下、その違和感の引用である。

 マイクロソフトブース アップルブースの展示員は、「Expoが始まってから初めて製品を見た」という人も多く、製品についての簡単な質問に答えられないスタッフも多い(プレス向けの公式な回答を用意できるスタッフが不在で、許可をもらえなかったため、そのときにした“簡単な質問”の内容と返答は明かせない)。


 上の赤字なのだが、どう考えてもこの文はそちらの都合であり、読者が知る必要のある内容とは思えない。(まあ好意的に解釈すれば、会場の臨場感を醸し出したいのか、あるいは悪意ある解釈ならばライターの自己顕示欲の表れか......)だから個人的にジャーナリズムとは事実を伝えるコトに終始することが本分だと思っている。(最近はそーでもないし、もしかしたら私の解釈がオカシイのかもしれないが)
 こんな風に書かれたなら、読者は「ではどんな質問をしたのか?」と興味を持ってしまうのではないだろーか?だから明かせない質問ならこんな一文を挿入するのは蛇足以外の何者でもないと感じる。まああくまで私が神経質すぎるだけかもしれないけどね。

 ただこの林さんという方、(mixiでも本名をさらされておられるので、検索も容易なのだが......)たまに彼の記事を読むと妙に「自分は事情通なんだ~」というオーラが文脈の節々から溢れてくきているのを感じるのだ。これは彼の文章でしか感じられない。

 他のIT系ライターでどーかと思うのは、山田祥平という方。某匿名掲示板では"ポエマー"と称されており、コチラでその彼の織りなすポエムを楽しむことができる。これもどーなのよ?と感じることがしばしば。ただたんにカレの物欲を毎週、垂れ流しているようにしか見えないのである。

 まあ改めて言うのだが、この雑感は私が神経質だからかもしれない。ただこれらの文章が彼らのブログなどの個人サイトで綴られるのならば、特になんの問題も感じないのだが、一応、これらのITニュースサイトってプロフェッショナルが書いているんだよね?つまり原稿料をもらっていると思うのだよ。その上で、ライターの自己顕示欲やら散文詩を垂れ流すのはどーなのよと思ったのであった。

新しいAppleのノートパソコン

 さて昨日、San FranciscoでMacworld Expoが開催された。そこでちまたで噂されていた超軽量ノートPCの発表があったので、ここで触れることにしよう。まず個人的にだが、(購入することに)全く興味がないことを言っておく。

 まず簡単にスペックをまとめてみた。

CPUIntel Core2 Duo, 1.6 or 1.8GHz
memory2GB, PC2-5300 DDR2
strorage80GB 1.8inch HDD or 64GB SSD
display13.3inch wide (WXGA, 1,280×800)
graphicsIntel GMA X3100
wirelessIEEE 802.11n, Bluetooth2.1+EDR
battery37wh, ~5 hours
interfaceUSBx1, micor-DVI
weight1.36kg


 今回は"薄さ"がウリらしく、禿の基調講演でも郵便用の茶封筒から取り出してみせるという演出があったらしい。しかしあくまで個人的にはだが、薄さはあんまり重要じゃないような気がするのだ。実際、その薄さの割りに重量が1.36kgというのは持ち運ぶにはちょっと重いような気がする。AppleのノートPCといえば機能と性能を妥協しない代わりに凄く重いというポリシーなのか、それだけでメインマシンとして使えていた様に記憶している。だからそれだけを買えばすべてが完結していたわけで、或る意味、割り切りが良かったのだ。だが今回のMacBook Air、正直言って中途半端な感じは否めない。なによりもUSBポートが1つというのはないだろうし、また光学ドライブがないので別のMacのドライブを利用してソフトをインストールしてくれというのは冗談が過ぎるよね~。さらに有線のLANポートを持たないというのは、ちょっと致命的ではないだろーか?(無線LANがどこでも繋がるというのは、いくらなんでも未来を先取りしすぎだ~)

 さて私は"薄さ"というのは重さを軽くするのには重要な要素だとは思うが、その反面、丈夫さを失うような気がしてならない。昔、SharpのMuramasaを持っていたのだが、結構、簡単に壊れたような気がする。さらにその薄さのおかげでメンテナンス性なんて皆無だ。だから正直言って薄いパソコンにはあんまり興味がない。(軽いのにはあるけどね。)さらにストレージデバイスが1.8inchのHDDというのもまた印象がわるい。上のMuramasaも1.8inchのHDDを搭載していたが、なにしろアクセス速度が遅かった。だからこのタイプのHDDを積んでいるPCは絶対に遅いという確信がある。だといってSSDのストレージをオプションで選ぶととんでもない値段になるみたいね。それにSSDは書き込み制限の問題は解決したのかしらん?

 もう一つ、メンテナンス性を上でも挙げたが、もともとMacにはそんなものは無い。しかしさすがにコレまでのモデルはバッテリーの着脱は出来たし、交換もユーザー側にゆだねられていた気がする。しかし、このMacBookAir、バッテリーまで内蔵だ。もしバッテリーがへたってきたら、Appleに交換のため送らなければならないのだ。ここまで来るとさすがにコレを買う気はおきんわな~

 某掲示板でも信者は「かっこい~」とか「定期、解約してすぐポチる!」とか書いているのも見かけたが、さすがに今回は見送り組が多いみたいだね。ココのコラムでも結構、ミソクソに書いている。


 今回のAppleの新製品発表、正直言ってなんにも魅力を感じなかった。まさにiPod touchの時とは正反対でワレながら笑ってしまったのであった。

げるっ!

 さて今日は久しぶりに研究のオハナシでもしようか......

 ワタシの元々も専攻は遷移金属錯体の合成と同定である。つまり無機化学だ。しかし今居るラボは生化学である。無機化学となんの関連があるのかといえば、扱っているタンパク質が重金属(特に銅イオン)を含んでいる所謂、金属タンパク質だからだ。

 そういうわけで、生化学のノウハウをあんまり持ち合わせていなかったワタシなのだが、この新年明け早々、電気泳動のスキルを重点的に磨くことにした。ちなみにウチのラボでも電気泳動はタンパク質精製後に行うがあくまでもツールである。プロテオミクスの様に偏執的(といっては失礼だが)に電気泳動をしつづけるというわけでは無かった。今回、電気泳動をフォーカスした理由は二つある。一つは時間的及び精神的ゆとりができたこと。そしてもう一つは(ウチの機器でできる)タンパク質間の相互作用を調べる方法を模索していたのである。

 タンパク質で行う電気泳動といえばポリアクリルアミド(Polyacrylamide)を用いたPAGE(PolyAcrylamide Gel Electrophoresis)が一般的で、SDS(Sodium Dodecyl Sulfate、ドデシル硫酸ナトリウム、洗剤などに用いられる界面活性剤)をタンパク質に作用させることでミセルを形成させタンパク質表面を負電荷にしPAGEを流す方法をSDSA-PAGE、タンパク質そのものの表面電荷のみを利用してPAGEを流す方法をnative PAGEという。

 今回、注目したのは後者のnative PAGEだ。タンパク質の相互作用を見るという目的としては決して洗練された方法とは言い難いのだが、まあやってみないコトにはわからないのでやってみることにした。またワタシ自身もnative PAGEを流したことがなかったので良い経験になるだろうと思ったのである。ちなみにタンパク質間の相互作用を見るのならば等温滴定(Isothermal Calorimetry)の方がより良い方法といえるのだが、今、ココでは引っ越しが済んだばかりでITCのセッティングが出来ていないのである|||(-_-;)||||||

 簡単にいえばPAGEとはタンパク質表面が負に帯電したものを電位差のある場におくことで負の方向に移動する現象を利用したものである。この移動度は分子量(とサイズ)に依存するので、タンパク質の分子量からの同定にもっともポピュラーな方法であるといえる。そんなPAGEであるが、DavisとOrnsteinにより開発されて以来さまざまな工夫がなされている。その一つに導入したタンパク質のバンドをよりシャープに収束させるためのスタッキングゲルが挙げられる。これは電気泳動に用いるバッファ(トリス/グリシンでpH8.3)よりも低いpH(6.8)で固めており、Kohlrausch反応がスタッキングゲル上で起こるためである。これはpH6.8では電気泳動バッファ中に含まれる塩化物イオンとグリシンイオンの移動度差による。グリシンのpIは5.97でスタッキングバッファのpH6.8の条件では塩化物イオンよりも遙かに中性に近い。それ故に泳動速度は非常に遅いのだ。それ対して塩化物イオンはpH6.8では高い負電荷であり、速い移動度となる。つまり、その塩化物イオンとグリシンイオンの中間にある表面電荷をもつサンプルがこのスタッキングゲル中で濃縮されるのである。これをKohlrausch領域という。
 SDS-PAGEの場合、SDS由来の負電荷がこのKohlrausch領域内にあり、うまく濃縮されるのであるが、native PAGEの場合はそういう風にうまくいくわけではない。これはnative PAGEではタンパク質表面負電荷のみがイオンの移動に貢献しているためだ。だからうまくpHを変化させたり、濃度を振ったり、バッファの種類を変えたりといろいろ工夫しなければならない。

 さてワタシの今回の目的はタンパク質同士の相互作用を直接観測するものだ。これは静電力が主な相互作用の因子である場合、pHに大きく依存することになる。したがってpH6.8のスタッキングゲルを通過させるのはためらわれた。タンパク質相互作用がpH6.8の条件下で失われる可能性があることもさることながら、2つのタンパク質共存下での反応速度のpH依存性によればより高い至適pHを示していたためだ。こういったときのために(かどうかは知らないが......)、スタッキングゲル無しで行う電気泳動(Continuous native PAGE)というものがある。McLellanらが開発した条件で、今回はpH8.7と7.4を試してみた。(そこまで到達するのに何度もゲルを作っては流していたのだが......)
 pH8.7ではトリスとホウ酸、7.4ではイミダゾールとHEPESの組み合わせ。このバッファでゲルも作るので、それぞれの条件では試料バッファも互換性がない。まあ非経済的な実験である。

 何度も言うがこの実験計画は全く洗練されていないとゆーか、どっちかといえばstupidだと思う。ただ運が良ければ見えるかもしれないというだけだ。特に今回の様に電子伝達タンパク質と還元酵素の複合体を直に見たいっ!という欲求にはそぐわない気がするのだ。(たいていそういった組み合わせは速い平衡状態のハズだから。)
 まあnative PAGEを見る限りではコントロールより遅い移動度だったので、楽天的に見れば悪くないデータだが、ちょい説得力に欠ける。そんなわけで来週はこのnative PAGEからWestern blotでもやってみようかと思う。
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