とは言っても全部、こぼしたわけではない。電子スペクトルを測定しているときに、タンパク質の入ったチューブを床に落としてしまったのら。ふたがあいたままでね。だいたい1/5を失ったみたい|||l_| ̄|○l||| なんだろ~ねぇ、不注意ってつもりもないんだが、手から滑り落ちたのでやっぱりそうなん?と思ったり。まあ自己嫌悪だわぁ。

 ただこの赤いタンパク質そのものはきれいにとれたみたいだ。一番最初に硫安沈殿をしてみたのが功を奏した感じ。でもどれくらいで析出するかわからなかったから、カンで青いタンパク質と同じ40%まで加えて上澄みを分離した。まあ不安だったんで一応、析出物もバッファに溶かして透析しておいたんだけどね。この操作のおかげで、以前ではどうも抽出しきれなかった赤いタンパク質を十分に液相に移すことができたようだ。

 基本的にワタシはプロテアーゼ(タンパク質を分解する酵素)阻害剤を入れないで精製するので、硫安沈殿後の上澄みの透析に時間をかけるのはあんまり好きではないのだがね。まあ今回は仕方がない。上澄みは飽和状態に近い塩濃度なわけだから、もしそのままクロマトグラフにかけたらイオン交換カラムを素通りしてしまう。透析を丁寧にして(5Lの低塩濃度バッファを4回交換した)から、陰イオン交換カラムに透析後の溶液をロード。ある塩濃度で出てきた赤いフラクションを透析して、今度は陽イオン交換カラムに通す。これはそのまま流れてきたヤツを分取して、ある程度濃縮した。これもまた透析してから、こんどはセラミック多孔質のカラムに流す。これはリニアグラジエント(徐々に塩濃度を上げていくこと)して、早いうちに出てくるフラクションを分取。最後にこれを十分に濃縮してからサイズエクスクルージョンで分離といった感じだ。SDS-PAGEは十分きれいに出ているのだが、正確な分子量を決めるために明日はJonathanに質量分析をお願いすることにした。

 この赤いタンパク質は酸化還元挙動を示すので、それぞれの状態の電子スペクトルを取っておく。どうも既報の赤いヤツとは微妙に精製方法やら電子スペクトルのピーク波長やらが違うので、とりあえずその文献に記載されているモル吸光係数は無視して、BCA法で見積もられるタンパク質濃度からモル吸光係数を導いた。まあ、質量分析の値をあとで考慮しなければならないんだけど、とりあえずだからSDS-PAGEで見積もられる分子量をここでは利用。

 う~ん、これだけではまだ報告されているタンパク質と同じモノかどーかわからんのだなぁ。あとはアミノ酸組成分析かアミノ酸配列分析をするか......(N末端側の配列は報告されているので)ただ今後のためにC末端側のアミノ酸配列も知りたいところ。というのは、上述の様に全部で4つのカラム、5つの精製ステップを経なければならないのはちょっとタイムコストが大きすぎるんよ。だから大腸菌の大量発現系を作れないかな~と思うのだな。JohnがN末端の情報とバクテリアの赤いタンパク質のアミノ酸相同性を元にいろいろとPCRで遺伝子をつり上げようとしてたけど、ずべてうまくいかなかったとか。だからC末端のアミノ酸配列情報がのどから手が出るほどほしいです。