さて前々から少しずつ触れていたので、カンのいい人は気づいたかもしれない。そう米国永住権の申請をしているのだ。

 米国永住権、すなわちグリーンカード。いわゆる外国人の無期限滞在を認めるビザである。ご存じの方もおられるとは思うが、簡単に説明すると、米国に入国するためには原則、ビザが必要である。通常、旅行などでやってくる観光客はVisiting Waiver Program(VWP)というやつで入国できるのでビザは必要ないのだが(最近はESTAとかゆーやつで事前登録が必要なようだが)、最大で90日しか米国内に滞在できないうえに働くことは許可されていない。

 ワタシが米国に来たとき、すなわち2001年夏の時点では、ワタシのビザステータスはJ1であった。J1ビザとは交換留学生・研究者ビザ。F1ビザ、つまり学生ビザと同じくらい簡単に認可されるステータスで、主に米国外でPhDを取得した人物が米国に入国するのに利用されるビザだ。このビザならば米国で働くことを許可されている。(F1もたしか届ければアルバイトやteaching assistant、research assistantは可なはず......)

 ワタシの場合、J1ビザは3年分下りたので、このステータスでめいいっぱい滞在後にH1-Bビザに切り替えた。J1ビザの場合、しばしば問題になるのは”2年間のアメリカ国外生活条件”である。ワタシの場合はこの範疇に当てはまらなかったのでWaiverを申請する必要はなかった。この俗に言う”2年縛りのルール”はIAP-66やDS-2019にも明記されているのだが、その対象にあるかどうかはこの書類だけではわからないので、付属のインターナショナルオフィスに問い合わせるしかない。まあかな~りブラックボックスなのだが、昔、言われたのは、外国のファンドによるサポートでJ1ステータスを取得した場合はこのルールが適用されるとか。(詳しくは各自の状況に応じて、適切な機関に連絡すべし)まあ、そんなわけでワタシのH1-B申請は難なく認可された。たしか2ヶ月たらずだったと思う。

 その後は東海岸からモンタナに移る際にH1-Bのトランスファを行った。ちなみにH1-Bステータスは更新1回可能で最長6年有効となる。ただしこの6年とはどこで働いていようが、トータルで米国にH1-Bとして滞在できる期間である。たとえばワタシの場合、東海岸で半年間、H1-Bステータスであった。このあとモンタナに移っており、ココでの有効期間は5年と半年となる。

 そのH1-Bステータスが今年の5月31日で切れるということは昨年の初夏から懸念していた。そこで、移民専門の弁護士に相談し、第二優先枠(EB-2)の国益免除(National Interest Waiver, NIW)で申請するのが良いということになったわけだ。さてNIWとはなんなのか?簡単に言えばアメリカ合衆国に国益をもたらす人材に対して労働省が発行する労働許可証を免除するという申請である。この申請嘆願書であるI-140を本日提出したのである。

 このI-140嘆願書に伴いサポート書類を提出しなければならない。これがこのEB-2NIWの申請で最も大変なところである。これも簡単に言えば、自身が優れた人材であることを証明することが骨子である。ワタシの場合は、これまでパブリッシュされた論文すべての別刷りやそれらの論文の総引用数と引用した論文すべての要旨(これだけで50ページ超の書類!!)、引用されたという証拠、国内外で発表した学会のプロシーディング、招待講演を証明するインビテーションレター、ある雑誌の表紙デザイン、参加している学会、学位証明を用意した。そして最も重要である、ワタシの学者としての能力をサポートする6人の推薦人からの強力な推薦状。これが一番、大変だった......

 基本的に自分で推薦状のドラフトをおこし、推敲に推敲を重ねてから推薦人に送る。これを推薦人が読んで問題なければ、署名付きでこちらに送ってくる。これらをNIWのサポート書類としたわけだ。なにが大変だったかといえば、何しろ自分を褒めちぎらなければならないこと。そして、具体的に何が米国にとって国益になるかを明確に記述しなければならないことだ。これらの作成に6ヶ月くらいかかったかな?しかも6通がすべて異なる文面でなければならないとゆーのも、6ヶ月かかった理由だろう。

 そーいうわけで、昨年の6月から始めたI-140嘆願書類の作成は今日をもって一区切りがついた形となる。ほぼ9ヶ月かかったことになるね。今は移民局からの受領書が送付されているのを待っている状態。これを受け取り次第、ただちに永住権の申請であるAdjustment of Statusに移行する。

 まあ、何にせよ時間とお金、労力のかかる作業であるわな。