また引き続きパソコンのお話。2年ほど前のエントリで取り上げたNVIDIA vs. ATI(AMD)のGPU戦争の現状だ。

 昨年の秋頃にATIはRadeon HD5xxxシリーズを発表。その最上位チップであるHD5870(コードネーム、Cypress)はWindows7の新APIであるDirectX11に完全対応する世界で最初のGPUとなった。これは全世代のHD4870に搭載されていたSheder Processor800基を倍にするなどの拡張を施したHD4シリーズの大幅な進化版であり、単精度で最大2.7TFlopsの演算性能を誇るとされていた。

 一方のNVIDIAは、ATIの新GPUに対抗するべくコードネームFermi(NVIDIAの最近のチップコードネームは有名な物理学者の名前をつける傾向があるらしく、前世代はTeslaだった)とよばれるGPUの存在を明らかにしていたのだが、開発が難航していたらしく、Radeon HD5870の発表に対抗して実機公開はできなかったのである。

 そんなNVIDIAであるが、ギークたちの間ではちょっとした祭りになっている。まあ、元はといえば2008年半ばに発覚したダイ・パッケージンク素材への不純物混入による熱暴走の可能性とその後のNVIDIAの対応の悪さから始まっているんだけどね。それが尾を引いているのか、このFermiアーキテクチャーのアナウンスがされるも、現物が出てこないとゆー状況であった。さすがにコレはマズいと思ったのかNVIDIAはとんでもないことをやらかしてくれたのである。

 まずFermiアーキテクチャーそのものはある意味、現時点でGPGPU(General Purpose Graphic Processing Unit)という用途には理想的なものらしい。だから彼らが推進しているCUDA実行環境としてはすばらしいものになるハズであった。ちなみにCUDAとはGPU用のC言語総合環境のことらしいが、NVIDIAとしてはこれを足がかりとしてGPUいよる物理演算を促進させていこうという考えがあったのだ(だから今回のアーキテクチャー名もイタリアの物理学者、エンリコ・フェルミ博士にちなんでいる)

 ではとんでもないこととはなにか?ココのCEO、ジェン・スン・フアン氏の鶴の一声かどうかしらないが、適当なビデオカードを一部、切断したモノをFermiコアをもつGPUを搭載したビデオカードだと発表したのだ。まあ、モックモデルを公表するのはわからんでもないが、少なくとも発表するに当たりきれいに仕上げるのが常識であろう。この常識をいとも簡単に打ち破ってくれたワケ。発表の翌日には直ちにその切断面の写真やら画像解析などがネットを賑わせる始末となった。

 さて次にNVIDIAにとっての悪い噂が米国オークリッジ国立研究所のスパコンに採用されるはずだったFermiチップがキャンセルされるというもの。これはちゃんとしたソースが見つけられなかったのだが、Fermiの歩留まりがよろしくないとか発熱量が半端じゃないとかいう噂に密接に関連している。

 上述の噂を裏付ける様に、新年早々のFermiチップの実働デモの様子が公開された。なんか強力な水冷ユニットを搭載しているのに、そのマシンに近づくと熱気を体感できるというもの。だんだんヤヴァさに実感がわいてくるのだ。

 そして2月23日のことある。その前日か前々日くらいからTwitterやらNVIDIAのFacebookアカウント(まあTwitterと連動しているから当然か)で、23日のその日に何か重大な発表があるみたいな、思わせぶりなバナーを公開。しかしこれは3月26日にBostonで開催されるイベントでFermi搭載チップのビデオカードを発表するよという予告の予告であった。これをうけてネット(主に確認したのは2ちゃんねるの自作版)ではキレ気味の書き込みが多数......

 そしてそして極めつけが最新ドライバの更新だ。Forceware196.75を既存のGeForceビデオカードを搭載したシステムにインストールすると、ビデオカードの冷却ファンが止まってしまい、ビデオチップを焼き焦がしてしまう(!)というやつ。この事件の悪質なのが、日本の主要なITメディアはほとんどそれを報じていなかったのだ。2ちゃんねるでは被害者が焼け焦げた無残なビデオカードの写真をアップするなど、文字通り炎上していた。これの補償問題とかどーなるんだろうかと思いつつも、まあこの年末年始にいろいろとNVIDIAは話題を提供してくれたわけである。

 さて現在、GeForce GTX480 & 470(Fermiアーキテクチャのチップをもつビデオカード)の発表があと2週間足らずとなったわけである。ちなみに現在のGeForceのラインナップは混沌を極めており、何を買えば最新のチップ搭載カードなのかよくわからない状態になっている。というのはNVIDIAが古いチップを利用したカードに新しい名前を付けて販売しているためだ。(これをNRT、NVIDIA Rename Technologyというらしい......)

 こんなこともあってか、NVIDIAはATIに対抗できるようなというか対抗できそうな体制になっていないようだ。最後に2ちゃんねるの葬儀スレで見かけたアスキーアートを紹介しよう。ちょっと笑ってしまったのと同時にこたつの消費電力を調べてしまいました。

        ├─────────────────────────┐
電気ストーブ.│                 1200W                 |
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こたつ..   |      600W        .|
        ├────────────┘
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GTX480  │ 298W..│
        ├───┘
        │
グラフからGTX480がずば抜けて省電力・低発熱という印象を受ける
性能ももちろん十分(暖房としては若干力不足の感は否めないが)と言える
本年度イチオシの定番ビデオカードと言えるだろう。自信を持ってお勧めしたい
なお、Radeonは強くアピールできるほど目立った結果が出なかったため割愛した