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 今日はMartin Luther King, Jr. Dayということで、公的には祝日だ。今朝は冷え込みが厳しく、氷点下26℃まで下がった。大学の授業も無いため、朝、外に出ると静寂の銀世界が広がっている。ここまで気温が低いとクルマもあまり走っていないのである。ラボに向かって歩いているウチにさすがに顔が痛くなってきた。まあだいたい15分くらいが外に居られる限界だろう。なんて思ってブログを書いているとこんなニュースを見つけた。

問題児をシベリア送り=過酷な環境で更生狙う-独
1月21日7時1分配信 時事通信

 【フランクフルト20日時事】問題児は極寒の地で更生を-。ドイツのヘッセン州ギーセン郡が、暴力行為で家庭や学校が持て余した少年(16)を更生のため、古くから流刑地として有名なロシアのシベリア地方に送り込んでいたことが明らかになった。
 ドイツのメディアによると、少年が送られたのは真冬には気温がマイナス55度まで下がる人口約5000人の寒村。テレビもインターネットもなく、暖を取るためにはまき割りをしなければならない環境で、少年は世話役1人と生活している。期間は9カ月の予定。
 現地を視察したギーセン郡青少年局幹部はフランクフルター・アルゲマイネ紙に対し、「少年は世話役とかかわり合い、自信と社会的能力を得た」と語っている。


 なんだかやることが過激だな(^^) でもこんな更正法もアリなのかもね。実際、氷点下55℃なんて聞くと、ヒトが生きてきてるかどーかの境界だよな。そう思うとモンタナの冬なんてまだまだチョロいのかもねぇ。

 さて昨年末の話になるのだが、日本の共同研究グループからデータが送られてきた。昨年の後半に私が精製したタンパク質を日本に送っており、そのタンパク質と彼らが持っているタンパク質の間の相互作用を解析するのが目的であった。さていざデータをみると数字(速度定数)とグラフ(サイクリックボルタモグラフィー)が記載されているだけである。まあ現象論としてはおもしろくて良いのだが、細かい実験条件(pHや温度、試料の濃度、嫌気下かどーかなど)や何回繰り返したのか(データの信頼性)、どのように数字を導いたのか(測定の原理や理論)がまったく説明されていないのだ。研究者ならだれでもそうであると思うのだが、まず得られたデータが審査論文に掲載するに耐えうる信頼性なのかを吟味すると思う。その際、上記の情報は必須だ。まあ最後の理論に精通することはコチラ側の責任でもあるので、電気化学は専門外なのだが、その理論が記された原著論文を探すことにした。まあ手がかりはある。その共同研究者である○ーズマンの過去の著書にある参考文献を漁るのである。そもそも彼の似たような実験を記した論文は日本化学会のChemistry Letterなので、ここMSUからはPDFをダウンロードできない(サブスクリプトされてないのだ)。だからひさしぶりに寒空の中を図書館まで行ってきてコピーしてきた。はたしてカレの論文にはその電気化学理論の参考文献が記載されていた。ACSのAnalytical Chemistryで1964年のものだ。

 さて今回、ちょっとショックを受けたことがある。その論文は簡単に読んだのだが、今回の件は私にもう少し数学を勉強しなおさなければならないことを痛感させてくれた。私自身は理系に進む以上、数学というのは絶対必要不可欠のツールだと思っていた。その反面、私は要領が悪い方だったので、演算実習とかあんまり得意ではなかったのだ。そんな私の問題を反映するようなことが学部時代にあった。

 私は化学科に通っていたので、当然、山のようにある化学の単位を片っ端から取っていたのだが、そこのシラバスには(化学科が提供するカリキュラムにおいて)初等の大学数学のみしか提供されていなかった。たしか"線形代数"とかいったかな?数学科の教授が教えに来ていたが一般教養の扱いであった。でも当時から"数学は大切"と思っていたので、まじめに受けていたつもりである。そんな中、同期の○んぴらも当然、とっていたのだが、ヤツは意外と演算センスがあるのか"マクローリン展開"の課題をさっさと解いていた。(コレには理由がある。その課題はおわった順に授業を退出してよかったのだ。だからヤツはさっさとかたづけて出ていきたかったのだろう。)私は教えてもらったことそすぐにできるというヤツではなく、どちらかといえば"グズ"だったので結構、時間がかかったのは覚えている。まあ私の同類でもある別の"グズ"も同様に時間がかかってたんだな~。ワタシがおわったとき、そいつはまだ解いていた。で訴えるような目をするので、まあワタシの理解の範囲で教えてあげてたんだ。そーしたら授業時間がおわってしまい、その数学科の教授はさっさと出ていってしまったのである。ちなみに課題を教授に出さないと単位がもらえないのだが、この数学概論はたしか必修だったので、こいつを落とすと限りなく留年に近くなるのだ。さすがに焦ってその数学科の教授のところまで課題を持っていったのだが、カレはご立腹であった。なぜ時間内にださないのかと。まあ、その辺はこちらに非があるのだが、なんだか数学に苦手意識ができたのはそのときかもしれない。その教授の後期の授業、"微分方程式"もとったのだが深い理解には至らなかった。そんなこともあり、ツールとしての数学の理解はちょっと中途半端なものとなってしまった。

 さて話をその電気化学の論文に戻そう。内容は簡単にはサイクリックボルタンメトリー(CV)を用いて電子伝達速度を数学的処理で見積るというものである。CVから得られる主要なデータは酸化還元電位と電流、そして掃引速度である。これらの値から速度定数を得られるというのが著者の主張である。論文には拡散の法則として有名なフィックの法則を元に理論を展開している。(CVを測定するときは攪拌しないので、この法則が生きてくるのだ。)そのフィックの法則の数式は微分方程式で記述されているのだ。ここにきて苦手意識が顔を出してきた。更に記述はその解を進める。このフィックの方程式の束縛条件が定義され、さらにこれをラプラス変換して解き進めていた。ここまで来ると自分の不甲斐なさがくやしいね。だから冒頭に戻るけど、数学を勉強しなければなと思ったワケ。

 学問なんて一見てんでばらばらに進歩しているけど、どこかで繋がっているんだなと思うときがある。(化学でも測定装置に"フーリエ変換"なんちゃらかんちゃら装置とかあるしね。)オイラーの公式なんて良い例だと思うよ。全く別の目的で作られたものたちが集まってできた"人類の至宝"。故に"単純で美しい理論こそ真実であろう"という言葉が重みをもつわけだからね。だからもし20代前半で数学ではない自然科学の分野に足を踏み入れようとしている人たちも、絶対に数学をやっておくことを薦めるよ。ラボの同僚のJohn(60代半ば)も数学の聴講しているしね。